電圧降下の計算は、配電方式ごとの「係数」を覚えるだけでほとんど解けます。 係数がなぜそうなるのかを一度理解しておけば、忘れても自分で導けます。
電圧の区分
電気設備に関する技術基準を定める省令(電技省令)第2条は、電圧を3つに区分しています。
| 区分 | 直流 | 交流 |
|---|---|---|
| 低圧 | 750V 以下 | 600V 以下 |
| 高圧 | 750V を超え 7,000V 以下 | 600V を超え 7,000V 以下 |
| 特別高圧 | 7,000V を超える | 7,000V を超える |
受電の 6.6kV は高圧、建物内の 100V・200V は低圧です。 「交流の低圧は 600V まで、直流は 750V まで」と、直流のほうが上限が高いことに注意しましょう。
主な低圧配電方式
| 方式 | 電圧 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 単相2線式 | 100V(または200V) | 小規模な電灯・コンセント |
| 単相3線式 | 100V / 200V | 住宅・ビルの電灯・コンセント。100V と 200V を同時に取り出せる |
| 三相3線式 | 200V | 電動機などの動力 |
| 三相4線式 | 400V 級 | 大規模ビル・工場の幹線(電灯と動力を兼ねる) |
電線の抵抗
電線1本の抵抗は R = ρ × L ÷ A(ρ:抵抗率、L:長さ、A:断面積)です。 長さに比例し、断面積に反比例します。電線を太くするほど、配線を短くするほど電圧降下は小さくなります。
電圧降下の係数
電線1本の抵抗を R、負荷電流を I とし、力率1(抵抗負荷)で考えます。 電圧降下 e は、送電端の電圧と受電端の電圧の差です。
| 方式 | 電圧降下 e | 考え方 |
|---|---|---|
| 単相2線式 | e = 2 × I × R | 行きと帰りの2本で電圧が下がる |
| 単相3線式(平衡) | e = I × R(電圧線と中性線の間) | 平衡なら中性線に電流が流れず、下がるのは電圧線の1本分 |
| 三相3線式 | e = √3 × I × R(線間) | 1相分の I × R を線間に換算して √3 倍 |
係数は「2・1・√3」です。
力率が1でないときは、R の代わりに R cosθ + X sinθ(X:電線のリアクタンス)を使います。 考え方は同じで、係数は変わりません。
計算例
電線1本の抵抗 0.1Ω、負荷電流 20A のとき、電圧降下は次のとおりです。
| 方式 | 計算 | 電圧降下 |
|---|---|---|
| 単相2線式 | 2 × 20 × 0.1 | 4V |
| 単相3線式(平衡) | 20 × 0.1 | 2V |
| 三相3線式 | 1.73 × 20 × 0.1 | 約 3.5V |
単相3線式の中性線
単相3線式は、2本の電圧線と1本の中性線でできています。 中性線と各電圧線の間が 100V、電圧線どうしの間が 200V です。
不平衡のとき
中性線には、両側の負荷電流の差が流れます。平衡していればゼロです。
電線1本の抵抗がすべて 0.1Ω、送電端の電圧が各 100V、 片側の負荷電流が 20A、もう片側が 10A の場合を考えます。中性線には 20 − 10 = 10A が流れます。
| 負荷 | 電圧降下の計算 | 負荷の電圧 |
|---|---|---|
| 電流の大きい側(20A) | 20 × 0.1 + 10 × 0.1 = 3V | 97V |
| 電流の小さい側(10A) | 10 × 0.1 − 10 × 0.1 = 0V | 100V |
中性線を流れる電流の向きが、電流の大きい側では電圧降下を増やし、小さい側では打ち消す方向になります。
中性線が切れると危ない
中性線が断線すると、2つの 100V 負荷が 200V に直列でつながった状態になります。 200V は負荷の大きさ(抵抗)の比で分かれるので、負荷の小さい側(抵抗の大きい側)に 100V を超える電圧がかかり、 機器が焼損するおそれがあります。
このため、電技解釈第35条では、多線式電路の中性線に過電流遮断器を施設しないことが原則とされています (過電流遮断器が動作したとき各極が同時に遮断される場合などは例外)。 ヒューズが中性線だけで切れると、断線と同じ状態になるからです。
電力損失の比べ方
線路の電力損失は、電線1本あたり I² × R です。
- 単相2線式:2 × I² × R
- 三相3線式:3 × I² × R
同じ電力を送るなら、電圧を上げて電流を下げるほど損失は小さくなります。 電流が半分になれば、損失は 4分の1 です。単相3線式は、同じ電力を 200V で送れるので、 100V の単相2線式より電流が小さく、電圧降下も損失も小さくできます。
電力会社が維持すべき電圧
電気事業法施行規則第38条は、電気を供給する場所で維持すべき電圧を定めています。
| 標準電圧 | 維持すべき値 |
|---|---|
| 100V | 101V の上下 6V を超えない値(95〜107V) |
| 200V | 202V の上下 20V を超えない値(182〜222V) |
覚え方のコツ
- 電圧の区分は「交流 600V・直流 750V・7,000V」
- 電圧降下の係数は「単2 は 2、単3 は 1、三相は √3」
- 単相3線式の中性線には「差の電流」。中性線は「ヒューズを入れない・切らさない」
- 中性線が切れたら「軽い負荷の側に高い電圧」
- 維持電圧は「101 ± 6、202 ± 20」
電圧降下の問題は、まず方式を読み取って係数を決め、次に1本あたりの抵抗を出す、という順に進めるとミスが減ります。