交流回路の計算は、使う式が少なく、手順が決まっている分野です。 「リアクタンスを出す → インピーダンスを出す → 電流を出す → 電力を出す」の順番を体に覚えさせれば、 第一次検定の計算問題は確実な得点源になります。 ここでは図を使わず、数値と手順だけで説明します。

交流の大きさは「実効値」で考える

家庭のコンセントの「100V」は実効値です。 正弦波の電圧は、最大値が実効値の √2 倍(約1.41倍) になります。 100V の交流なら、最大値は約141V です。 試験で単に「電圧 100V」と書かれていれば、実効値として計算します。

抵抗・コイル・コンデンサの違い

素子 電流を妨げる量 周波数との関係 電流の位相
抵抗 R 抵抗 R〔Ω〕 周波数に関係しない 電圧と同相
コイル L 誘導性リアクタンス X_L = 2πfL〔Ω〕 周波数に比例して大きくなる 電圧より 90°遅れる
コンデンサ C 容量性リアクタンス X_C = 1 ÷(2πfC)〔Ω〕 周波数に反比例して小さくなる 電圧より 90°進む

周波数を2倍にすると、X_L は2倍、X_C は半分になります。 直流(周波数0)では、コイルはただの導線、コンデンサは電流を通さない、と考えると向きを間違えません。

直列回路のインピーダンス

抵抗とリアクタンスは、位相が90°ずれているので単純に足せません。 直角三角形の斜辺として合成します。

  • インピーダンス Z = √(R² + X²)
  • コイルとコンデンサが両方あるときは、X = X_L − X_C(差をとる)
  • 電流 I = V ÷ Z

X_L と X_C が等しくなると X = 0 になり、Z は R だけ、電流は最大になります。これが直列共振で、 共振周波数は f = 1 ÷(2π√(LC))です。

数値例

抵抗 8Ω とコイル(リアクタンス 6Ω)を直列にし、100V の交流電圧を加えた場合です。

手順 計算 結果
インピーダンス √(8² + 6²)= √100 10Ω
電流 100 ÷ 10 10A
力率 R ÷ Z = 8 ÷ 10 0.8

「3・4・5」「6・8・10」の直角三角形はとても多く出ます。見えたらすぐ Z を出せるようにしておきましょう。

3つの電力と力率

電力 単位 意味
皮相電力 S V × I VA(ボルトアンペア) 見かけの電力
有効電力 P V × I × cosθ(= I² × R) W(ワット) 実際に消費される電力
無効電力 Q V × I × sinθ(= I² × X) var(バール) 行き来するだけの電力

3つの間には S² = P² + Q² の関係があります。これも直角三角形です。 力率 cosθ は P ÷ S、直列回路なら R ÷ Z で求められます。

先ほどの数値例では、S = 100 × 10 = 1,000VA、P = 1,000 × 0.8 = 800W(= 10² × 8)、 Q = 1,000 × 0.6 = 600var(= 10² × 6)となり、800² + 600² = 1,000² が成り立ちます。

有効電力を消費するのは抵抗だけ、コイルとコンデンサは無効電力にしか関わりません。 「I² × R」で電力を出すときは、R に抵抗分だけを入れます。

三相交流の2つの結線

三相交流は、位相が 120° ずつずれた3つの交流を組み合わせたものです。 負荷(または電源)のつなぎ方には、Y結線(星形結線)とΔ結線(三角結線)があります。

結線 線間電圧と相電圧 線電流と相電流
Y結線 線間電圧 = √3 × 相電圧 線電流 = 相電流
Δ結線 線間電圧 = 相電圧 線電流 = √3 × 相電流

「Y は電圧に√3、Δ は電流に√3」と覚えます。 Y結線は各相が中性点でつながるので、1相にかかる電圧が線間電圧より小さくなります。 Δ結線は各相が線間に直接つながるので、1相の電圧は線間電圧そのものです。

三相電力の求め方

平衡三相回路の電力は、次のどちらでも同じ値になります。

  • 1相分の電力 × 3(= 3 × 相電流² × R)
  • √3 × 線間電圧 × 線電流 × 力率

数値例(同じ負荷をYとΔでつないだ場合)

1相あたり抵抗 8Ω・リアクタンス 6Ω(インピーダンス 10Ω)の平衡負荷を、線間電圧 200V の三相電源につなぎます。

項目 Y結線 Δ結線
1相にかかる電圧 200 ÷ √3 ≒ 115.5V 200V
相電流 115.5 ÷ 10 ≒ 11.5A 200 ÷ 10 = 20A
線電流 ≒ 11.5A 20 × √3 ≒ 34.6A
三相の有効電力 3 × (200/√3 ÷ 10)² × 8 = 3,200W 3 × 20² × 8 = 9,600W

同じ負荷をΔ結線にすると、消費電力と線電流はY結線の3倍になります。 1相の電圧が √3 倍になり、電力は電圧の2乗に比例するからです。 逆に、Δ結線の負荷をY結線の等価回路に置き換えるときは、1相のインピーダンスを 3分の1 にします。

力率改善の考え方

誘導電動機のようにコイルの性質をもつ負荷は、電流が遅れて力率が下がります。 負荷と**並列にコンデンサ(進相コンデンサ)**を入れると、進みの無効電力が遅れの無効電力を打ち消し、 力率が1に近づきます。有効電力は変わらず、線路を流れる電流が小さくなるので、電圧降下や電力損失が減ります。

覚え方のコツ

  • 計算の順番は「X → Z → I → P
  • コイルは遅れ、コンデンサは進み。直流でコイルは素通り、コンデンサは通さない
  • 力率は「R ÷ Z」または「P ÷ S」。どちらも直角三角形の底辺 ÷ 斜辺
  • 三相は「Y は電圧に√3、Δ は電流に√3」、三相電力は「√3 VI cosθ
  • 同じ負荷なら「Δ は Y の3倍

この順番どおりに手を動かす練習を繰り返すと、選択肢の数値を見ただけで計算の見通しが立つようになります。